紀伊國屋ホール公演「ゴミ、都市そして死」無事終了しました

 終わった…。
 何もかも終わった…。

 9月「パーフェクト奥様」、10月「ゴミ、都市そして死」、ふたつ連続で進めるのは、たいへんな荒業でした。人集めからお金の計算から、ゼロからすべて仕切って、けっこう頑張った…。
 今までの人生が怠け過ぎだったのです。一日の半分を寝て過ごす生活に飽き飽きしていたのです。「やればできる」とタカをくくって何もしなかった今までに落とし前をつけたくて、何かしようとしたのです…。やり終わって、充実感があるかと思いきや、ただひたすら疲れて眠いです。まだお金の清算も終わってないし、一日ひとつ何か用事を済ますと、もうそれだけで眠い…。

 1月末に下北沢のタウンホールで「饗宴」というお芝居をやってから、半年くらい何にもしてない日々があって、9月に下北沢のレンタルスペース「スターダスト」でミュージカルをやることに決めました。
 決めちゃって、キャストも集めた後に、いつものように仲間と借りてる都内の畑で草むしりをしてると、いっしょに草をむしってた美術家・加藤ちかさんが、「紀伊國屋ホールが急に空いちゃったんだけど」と唐突につぶやきました。
 なんでも、お知り合いが借りてた日程で公演をしたい若手の団体を急募中とのことでした。
「いいですね〜、ちょうど昨日、ファスビンダーってドイツの映画監督の戯曲をやりたいなって、友人と話してたばかりなんですよ〜。」
 とお答えすると、
「9月にも公演あるのに、いいの?話を繋いじゃうわよ」と。

「他の若手にも声かけたんだけど、みんな怖じけてやらないのよ」
「へえ〜」
 という会話をしたときには、私はまだ紀伊國屋ホールを借りるのにお幾らかかるのか、そこに人を集めるのにどのような制作力が必要か、今までやった小劇場と紀伊國屋ホールのような中劇場の違い、等々を何もわかっちゃいなかったのであります。
 知らないので怖じけようがなかったのです。
(今も何もわからないままには変わりありませんが。)

 スタッフさんは、加藤ちかさんのご尽力もあって、割と早い段階で決まってゆきました。バンド「石橋英子とぎりぎり達」がライブ出演を承諾してくれたことは、どれほどの力になったことか。
 大変だったのはキャスティング。三ヶ月前に出演オファーしても、役者さんってほとんどスケジュール埋まってるのです。主演のローマ・Bに緒川たまきさんが決まったのは奇跡以外の何ものでもありません。
 加藤ちかさんが「私の知り合いの若手演出家の公演に出てたから、話ぐらいは聞いてもらえるかも」とおっしゃった瞬間、私は「緒川さんは絶対にファスビンダーがお好きだ!!!!」とビビッと来まして、事務所に熱いメールを書いたのです…。結果は、皆様ご存知の通りです。
(なぜこのような「ビビッ」が仕事で切羽詰まったときしか発揮されないのでしょう?プライベートで男性にビビッと来ることはまったくない。)
 しかも、加藤ちかさん、こないだ、
「あれ間違いだったの。私の知り合いの演出家の芝居、緒川さん出てなかった。見にきてただけ」
 だって。おいおい!!
「もし見にきてただけって知ってたらオファーしなかった?テヘ」
「しなかったかもしれないですよ!私、けっこうビビリなんですよ!」
 てな感じで、まったく、危ない橋を渡ってたものです。

 準備は大変だったけど稽古は面白かった。
 都内の古ーいビルの一室を借りてたのですが、男子楽屋がタバコ吸う部屋みたいになってて、俳優の男子がゴロゴロ寝っ転がったり、タバコ吸ったり、着替えたりしてるのです。
 男子は、慣れるとその場に誰がいてもズボンを履き替えることを臆さない。
 あんなに色んな種類の男子のパンツを見たことはなかったです。

 なんでしょう…大変すぎて男子のパンツしか稽古の印象がない…。

 いや、そんなことはないはずだけど…。

 あのような貴重な日々はなかなか言葉にできるものではないです。
 古いビルで埃まみれだったけど、良い稽古場だったなあ。

 それにしても、楽日には、紀伊國屋ホールが満員になったからね。入り切らないお客さんだっていて、照明ブースで見てもらったんだから…(そのせつはすみませんでした)。
 ご来場の皆様、誠にありがとうございました。
 旗揚げ二年目の第五回公演で、紀伊國屋ホールを満員にした劇団なんて、前代未聞ではないでしょうか。
(しかも五回のうち、一回は北村早樹子ちゃんとのコントだよ!私も漫才やったよ。あれ面白かったなあ。)
 もはや伝説といっても過言ではない(!!!!!!)
 すべてキャストやスタッフの皆様のおかげです。
 緒川たまきさんは毎日変わらず、震えるほど美しかったです。たくさんの舞台を踏んできて培われた技術に瞠目させられ、舞台に賭ける情熱を日々目の当たりにさせてもらい、作りながらも胸熱くなりました。
 若輩ものの自分にもったいないほど良い経験させてもらって、ファスビンダーさまさまで、もうドイツの方角に足を向けて寝られないかもしれません!!

 なんて幸運なのでしょうか…。
 実務的には筆舌に尽くしがたいほど難儀だったし、うまくいかないこともたくさんあったし、力及ばずと感じ、無力感や徒労感に苛まれることもあり、胃も腰も痛くなって、眉毛がヘの字になってましたが、稽古中も公演中も思うことはずっと同じで、なんて幸運なのだろうか…とそればかりでした。

 スター誕生で優勝したアイドルの卵ぐらい私はラッキーガールだと思います。
 今、こうして何事もなかったかのようにPCに向かってブログを書いていて、特にモテるようにもならず、まったくお金持ちにもならず、数ヶ月前畑に出ていたときと変わらぬ日々を送っていますが…。今の私は、あれみたい。バック・トゥ・ザ・フューチャーで時間旅行をして帰ってきたマイケル・J・フォックスみたいな感じです!タイムパラドックスで歴史が少し変わってるかもしれないですね!!(平賀源内は実在しなかった…みたいに微妙なとこが。)

 くだらない話はあれですが、ご来場の皆様、まことにありがとうございました。
 キャストスタッフの皆様には特別に感謝の意を捧げたいと思います。
 今回、うれしかったのは、キャストの皆様が、毎晩毎っ晩、稽古の後に、近所の安い中華料理屋でお酒飲んでたらしい、というところ。急に集めて誰も知り合いじゃないと絶対盛り上がらないと思ったので、微妙に面識ありそうな方々どうしを集めたところ、「20年振りに××さんと共演なんだよ、毎日が同窓会みたい!」等々のお声をいただきました。
 粘ったんだ、このキャスティング。合コンとかお花見のメンバー集めでやるようなことを、二百倍ぐらいの繊細さと集中力と超能力を駆使して、微妙なさじ加減で行っていったのです。メンバー集めは大事だね。おかげで19人のキャストさんがなんとなくまとまったように思います。中華屋さんにも感謝。キャストが毎晩飲んでると、なんで演出家が嬉しいのか全っ然分かりませんが、今回は、それがなんだかとても嬉しいことだったのでした。




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by chigirayuko | 2013-11-13 23:09
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千木良悠子の日記です。
by chigirayuko
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